自閉性コミュニケーション 上司の工夫 2008-4-29
人間の知能は高度なもので
「やあ」とか「おい」とか言われただけで、
その声の調子や周囲の状況から、
肯定なのか否定なのか、どの程度の強さなのか、敏感に感じ取るものだ。
財布が机の上にあったとして、
誰かが置いているのか、忘れたのか、
警察に届けたらいいのかどうか、そのままにしたらいいのか、
どこかに明日までしまって置いてあげたらいいのか、
瞬時に判断している。
自閉性傾向のある場合、そのあたりがうまく行かない。
ツー・カーができない。
分かり合えない。
しかし特殊な場面で特殊な共感をしたりもする。
会社で、一番気のつく奴には、「例の件、よろしく」とだけ言っておけば、いいものだ。
細かいデシジョンツリーまで共有できる。体験を共有し判断を共有している。
自閉傾向の強い人はにはそれではまったく不充分で、
こちらの思っていることの100分の1も伝わっていない。
そんなタイプの人には、噛み砕いて、誤解も混乱も迷いもないように伝えないといけない。
それがデキル上司というものだ。
自閉性傾向の強い人には「昼飯、適当なやつ買って来い」ではまったくだめで、
当人は途方にくれる。
「きれいに掃除しろ」ではだめで、何をどこに片付けたらいいのか、ひとつひとつ具体的に指示する。
具体的に、である。「この近くの●●の店分かるか?そうか、そこに行って、鮭弁当3つと焼肉弁当3つ、買って来い。なかったら、ご飯とおかずのついた弁当で500円以内の弁当を合計6つ。お金は3000円渡すから、これでまとめて買って来い。買ってきてからそれぞれで支払う。品物がなかったら、そのまま一回帰って来い。いまから行って、12時までに帰ってくればいい。」
まるで、コンピュータに命令する感じである。
そのかわり、一度覚えてしまえば、「この間と同じやつを6つ買って来い」ですむ。この人たちは決して他のことを考え付かないし、間違えない。
臨機応変ができなくて、応用が苦手なだけである。大局的な状況判断ができない。
要するにみんなで昼ごはんが食べられればそれでいいんだとの判断ができない。
途中で弁当大安売りをしていても、買わない。
だから、判断を代わりにして、細かく与える。それを忠実に守ることは得意だから、
上司次第なのである。
途中の店で安売りを逃したからといって、叱ってはいけない。指示通りだったと誉めてあげて欲しい。
鮭弁当が二つしかなくて焼肉弁当は三つ買ってきて、五人しか食べられなくても、そのときも、誉めてあげてほしい。6人分に決まっているだろうと怒らないことだ。上司を怖がるようになって、なつかない。散歩だと思って自分で好きなものを買いに行けばいい。
柔軟に考えられる人が柔軟に考えてあげよう。
6人分じゃないから叱ってしまったら、それこそ、自閉性傾向というものではないか?
最近では自閉性傾向のある人は増えていて、(原因が不明なのが残念だけれど)、
そんな人たちを生かす指示の仕方はあるのだから、工夫してみて欲しい。
気のきくやつはどんどん減って、いまや千人に一人だと思ったほうがいい。