ホルモン補充療法に伴うリスクについて 2008-3-13

ホルモン補充療法に伴うリスクについて 2008-3-13

たとえば以下のような報告があり、
注意しつつ、使用する。

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ホルモン補充療法後も一部の健康リスクは残る

提供:Medscape

 研究者らがホルモン補充療法の是非を検討

Kathleen Doheny


 【3月4日】ホルモン補充療法(HRT)を止めた女性を約2年半追跡した最新研究から、治療を止めた閉経後女性にとってよいニュースと悪いニュース、そして驚くようなニュースがある。

よいニュースは、エストロゲンとプロゲスチンの併用療法に伴うリスクの一部、例えば心疾患、脳卒中、肺血栓リスクの増大が、治療を止めた後には消失することが研究で分かったということ。ただ、残念ながら、股関節骨折と結腸直腸癌を防ぐというホルモンの防御作用も、同時に治療を止めれば消えてしまう。

また、HRTをかつて受けていた女性は、その2年半後であっても乳癌のリスクは高いままであることが、「Women’s Health Initiative(WHI)」というオリジナルの研究で分かった。ただし、HRT中止後のリスクの大きさは、統計的には有意でない。そして驚くことに、かつてHRTを受けていた女性は、複数の種類の癌についての全リスクも、HRT未経験者より高いことが今回分かった。

癌に関するこの驚くべき発見を始めとする新知見にもかかわらず、「結論は変わっていない」と試験研究者のGerardo Heiss, MD(ノースカロライナ大学公衆衛生学部疫学教授、チャペルヒル)が述べている。標準的な助言はまだ有効だ、とHeiss博士はWebMDに語った。

しかもこれは、ほてりなどの煩わしい症状を鎮めるのに必要な最小限の用量のHRTをできるだけ短い期間だけ使った女性についてのことだ。

この研究は、『The Journal of the American Medical Association』3月5日号に掲載されている。

HRTと健康リスク:研究の詳細

高齢者に対するエストロゲンとプロゲスチンの健康作用について調べるために実施されたオリジナルの研究であるWHIに参加した16,608例の女性のうち15,730例をHeiss博士らは追跡した。WHI研究は、平均しておよそ5.6年間の治療をした2002年に終わっており、ホルモン療法を受けた女性はプラセボを受けた女性よりも、乳癌リスクが高いことがその時点で分かった。

試験期間中は、心疾患、脳卒中、血栓のリスクは、ホルモン使用者の方がホルモン未使用者よりも高いが、結腸直腸癌と骨折のリスクは低いということも分かっていた。

2002年7月から2005年3月まで実施された今回の新たな追跡研究でHeiss博士らが調べたのは、ホルモンを中止することが6つの転帰に与える影響であった。6つの転帰とは、心疾患、脳卒中、肺での血液凝固(肺塞栓)、浸潤性乳癌、結腸直腸癌、股関節骨折である。

HRTと健康リスク:知見

「我々にはよいニュースがいくつかある」と、ロサンゼルス生物医学研究所(カリフォルニア州)の腫瘍内科医で、別の研究の研究者であるRowan T.Chlebowski, MD, PhDが語った。「心血管疾患のリスクは、ホルモンを止めたら本当になくなった」

心臓発作、脳卒中、肺での血液凝固といった心血管系疾患のリスクは、HRT治療経験者と未経験者で差がなくなった。このような「事象」の症例数はHRT経験者群が343、未経験群が323だった。

治療経験者のHRT中止後の骨折のリスクは未経験者と差がなく、このことはホルモンの防御作用も治療を止めれば消失することを示している。結腸直腸癌の発生率も両群間で有意差がなく、やはりHRTで見られた結腸直腸癌に対する防御作用が消失したことを示している。

乳癌のリスクは、追跡期間中も高いままだった。Chlebowski博士によると、HRT中の女性は治療を受けていない女性に比べて乳癌のリスクが27%高い。追跡期間中に乳癌が発生した女性の数は、HRT経験者群が79例で、未経験者群は69例だった。しかし、博士によれば、この差は有意ではなかった。

乳癌リスクについて調べると、「乳癌リスクが低下するには若干期間が短かったのかもしれない」とHeiss、Chlebowski両博士は語った。「乳癌リスクが減少する傾向は見られた」とHeiss博士はWebMDに話している。

その他に問題となる癌の知見として、「HRT中の女性はすべての(侵襲型の)癌のリスクが、プラセボ群よりも24%大きかった」とHeiss博士は述べている。追跡期間中に癌が発生した人数はHRT経験者群が281例だったのに対して未経験者は218例だった。それでも「大げさに心配するほどのものではない」とHeiss博士は話している。

Chlebowski博士は、この知見は「懸念材料」であり、さらに試験を行うべきものだと述べている。肺癌などその他の癌がHRT未経験者よりもHRT経験者の方で多かった理由は謎である、と博士は語った。

さらに1人の専門家が議論に加わる

今回の最新研究には、いくつかのよいニュースがある、とユニバーシティ病院ケース医療センター(クリーブランド)マクドナルド女性病院産婦人科長であるJames Liu, MDが語った。Liu博士は今回の知見をWebMDのために検証してくれた。博士は、2001年までWomen’s Health Initiativeの主任研究員の1人だった。

「よいニュースは、ほとんどすべての副作用は元に戻るようだ、ということだ」と博士は言う。「乳癌の問題は解消するにはもう少し時間がかかるだろう」

HRTと健康リスク:治療経験者への助言

Chlebowski博士によれば、HRTを受けた女性は、マンモグラフィや結腸直腸癌スクリーニングといった癌スクリーニング検査に注意を払うべきである。

HRTをまだ続けている女性は、その必要性について医師と一緒に定期的に繰り返し検討すべきだ、とLiu博士は言う。「治療をまだ続けているならば、ぜひ質問すべきだ。なぜ治療をまだ続けているのですか? (閉経に伴う)症状がまだあるのならば、乳癌検診を継続する必要がある」

今回の知見は、併用HRTの場合にのみ当てはまる。エストロゲンのみを使用した女性の追跡結果は、もう少し後で出る予定である。

製薬企業の見方

WHI研究で用いられたHRTを製造したWyeth Pharmaceuticals社の後援によるテレビ会議で話した代表者によると、WHIで用いられたホルモンの処方は、今日一般的に用いられる処方とはやや異なっている。Wyeth社によれば一般的な治療期間は短くなってきており、用量もWHIで用いられた用量よりも少ないのが一般的である。

現在、HRTはWHI研究の時よりも若い女性にも処方されている。WHI参加者の平均年齢は、研究開始時で63歳だった。 Wyeth Pharmaceuticals社(フィラデルフィア)の上級副社長で医学担当重役のGary Stiles, MDによれば、高齢者でのリスクは若年者でのリスクとは同じではない。

今回の研究結果は、症状が最も悩ましい閉経期の「つらい」時期にホルモン療法を用いる女性を勇気づけるものである、とWyeth社は述べている。


 
 Gerardo Heiss, MD ノースカロライナ大学(チャペルヒル)公衆衛生学部疫学教授 Rowan T.Chlebowski, MD, PhD ロサンゼルス生物医学研究所(ロサンゼルス)の腫瘍内科医 James Liu, MD ユニバーシティ病院ケース医療センター(クリーブランド)のマクドナルド女性病院の産婦人科長

Heiss, G. TheJournal of the American Medical Association, March 5, 2008: vol 299: pp1036-1045.

Gary L. Stiles, MD Wyeth Pharmaceuticals社の上級副社長・医学担当重役


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