不安階層表を作る→克服訓練をする 不安系克服法 2008
そんなに簡単に割り切ることはできないだろうけれども、不安障害全般は、「間違った深い学習」の結果なので、そうした学習を取り消してしまうには、行動を通してもう一度深い学習をするしかないのではないか。
なぜうっかり深い学習をしてしまうのか。それがはっきりしない。
だから、どのようにして、次に深い学習をすればいいのか、分からない。
そこが肝心の問題のようだ。(2023記)
-----
パニック障害、全般性不安障害(GAD)、社会不安障害(SAD)、強迫性障害(OCD)について。
1.
まず病気の仕組みを理解していただいて、
強迫行動を繰り返していれば、またはパニックを回避していれば、
不安が固定して、悪くなるだけだから、
克服しようと決意していただく。
克服する合理的方法があることを納得していただく。
強く動機付けする。
2.
次に、不安の階層表を書いていただく。
不安系の病理の場合、
パニック障害でも、
対人恐怖や社会不安障害でも、
強迫性障害でも、
まず、自分の不安な場面がどのあたりにあるのか、
書き出してみる。
そしてそれを苦手な順に並べてみる。
そしてカウントダウンするみたいに、
下のものから一つ一つ克服して行く。
3.
まず一番下の目標を標的にして、
薬を使って、
誰かに付き添ってもらって、
克服する。
できたら、一人でやってみる。
薬を飲んだままで、一人でできたら
それでいったん卒業にしてよい。
次の目標は、
薬を減らして、最後は薬ゼロで、一人で実行することであるが、薬を飲んで一人で何でもできるなら、実質、生活に支障はない。
できるまで繰り返す。
克服するまで繰り返す。
繰り返していると、そのうち、薬を飲まないでできることが増えてくる。
薬を飲まないでも自由に行動できれば完治だけれど、
それはそのうち達成するというつもりで充分だ。
薬を飲んで、全部できれば、それで一応完成。
日常生活には支障がなくなる。
*****
電車恐怖で言えば、
不安は実は、
「電車が怖い」のではなくて、
「電車が怖かった」ことが根にあるのであって、
「電車は怖くない」と学習すればいいだけなのだと思う。
「電車が怖かった」のは確かだが、
それを「電車は怖い」と錯覚している。
それは錯覚であり、学習で訂正できる。
「電車は怖くない」を繰り返してもらう。
繰り返せば漢字が書けるようになった。
繰り返せば自転車に乗れるようになった。
それと同じ。だから繰り返そう。
最初は漢字が書けなかった。
最初は自転車に乗れなかった。
学習してできるようになった。
今回は、「電車が怖かった」と学習してしまった。
それを打ち消すことができるまで、反復して学習することだ。
だから、最初は、薬を飲んで、誰かに付き添ってもらって、
電車は怖くないという学習をはじめてもらう。
次に、薬を飲んで一人で、電車は怖くないと学習してもらう。
たいてい、不安の階層表は、
各駅、急行、地下鉄と並んでいるので、その順にトライしてもらう。
*****
とっても大雑把にいうと、
1.自意識の世界モデルは壊れていない。だから不安症だといえる。いくら考えを訂正しても、だめ。
2.自動機械の世界モデルが壊れている。だからその部分を行動療法的に治す。頭で納得しても、体で納得しない限り、だめ。行動するためには不安を低くしないといけないので、薬を飲んで、誰かに付き添ってもらう。自転車には補助輪、水泳には補助人、不安には薬と補助人である。
「電車に乗ったら冷や汗が出てドキドキした」という自動機械の経験があり、それを自意識は、不安恐怖と考えて、恐怖症が成立する。
治療は、解釈を変えることではなくて、「電車に乗ってもドキドキしない」と何度も学習することである。
*****
私は公文式をとても高く評価している。
公文式では、算数の問題で、「できたら次のレベル」と急がない。
「できたらそのまま続けて成功体験を積み重ねる」。
そこが偉い。
時間をかけて、自分ができる最高の所を何度も繰り返す。
すると自動機械が学習して行く。
そして次のレベルへの準備が整う。
そうすれば自然に次のレベルに行ける。
学習には時間が必要である。
脳の回路を一部訂正するのだから、時間が必要である。
「間違った学習」は一発で成立する。
それを訂正するのは時間をかけて反復する必要がある。
しかし時間をかけて反復すれば必ずできるようになる。
それだけのことだ。
それだけのことなのだが、あれこれ考えて、袋小路にはまりこむ。
だから、考えていても仕方がない、考える部分では間違っていないのだ。
自動機械を訂正しないといけないのだから、
行動しないといけないのである。
それをしないで、あれこれ考えていても、治らない。