自己愛とネット社会 2008-10-7

自己愛とネット社会 2008-10-7

ノーマルな自己愛またはその延長としてのやや強烈な自己愛の系統ではなくて、
病的な自己愛という意味で分類すると、
次のような案が出ていて、どちらも元はGabbardである。

ざっと眺めて見て、

無自覚型 無関心型 oblivious narcissism は自分が情報発信者となるタイプのようだ。

過剰警戒型  過敏型 hypervigilant narcissism は結構被害的な感じで自分や自分に関係する悪い情報がないか見張っている(vigilant)ような感じだ。妄想性人格障害と似た感じもある。

悪性の自己愛型 malignant narcissism はoblivious型の悪いところと
hypervigilant型の悪いところを複合させたような感じだ。
基本的には他人に無関心で他人を褒めるようなことはないのだが
傷つけられることには敏感で、うぬぼれを傷つけられたときに激しい攻撃をする。
自分や他者に対して攻撃性を表現するときに自己の誇大性を確認するというわけで、
要するに他人と悪く関わり合うばかりである。
人を褒めない、人に褒められて当たり前、けなされると一瞬も我慢ができず
激しい攻撃性を発揮する。攻撃しているときに自分の強さを実感して快感である。
すると相手は根に持って陰に陽に攻撃するので、
ますます人の言葉や態度に過敏になり悪循環が続く。

*****
おおむね、無自覚型が自分の誇大性を確認したくてネット上で何かを発信している。
過敏型がそれをじっと息を潜めて見守っていて、何かあると打ちのめされる。
ネット上で何かを発信しているから誇大的とか自己愛的とか断定するものでは全くないけれど、
発信している人は過敏型よりは無自覚型に近いはずだ。

無自覚型が一人いれば
そのまわりに過剰警戒型が何人かいて、
さらにその外側に、ネットなんかタダのネットじゃないかという
健全な人たちがいる。
ネットなんか時間を決めてつきあっておいて、
白球を追いかけて、数学の問題を考えて、そんなキミがいいと思う。

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そもそもパソコンというものが特殊だったし、パソコン通信というものも
普通は参入しにくいものだったはずだ。
ましてハードの管理者になったり何かのコミュニティの管理者になれば、
それだけでかなりの自己愛の満足だった。かなり健康な満足だ。

しかしその後ネット社会は大衆化して、
無自覚型に強力な武器を与えた。
被害者になるかもしれないと恐れる過剰警戒型は日々密やかに息を詰めて見守っている。

そのあたりがネット社会が自己愛性の心性を助長しているという表現の内容である。

ビールの自販機が多くなっても大多数の健康な人は問題ないが
一部の人はアルコール症のきっかけになってしまう
自販機がなければアルコール症にもならなかったかもしれない
簡単にアクセスできるのでアルコール摂取年齢層は幅広くなり、男女に及ぶことになったのだろう。

ネット社会に簡単にアクセスできるようになったことで、
一部「無自覚型自己愛パーソナリティ」の人は「はまった」わけだろうし、
性格の一部を拡大してしまったわけだ。
一部「過剰警戒型自己愛パーソナリティ」の人も時間をとられることになったのだろう。

大多数の健康な人にとっては、ただの道具で、
なにも過大に評価する必要はないのだろうと思うが。

しかしその場合、テレビと同じで、精神の発達過程にある子どもの場合には
環境を大人が整えてあげないとよくないだろう。

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もともと無自覚型自己愛パーソナリティの人にネット社会が強力な道具を与えたことは確かで、
ますます性格の一部が拡大された。
Win95と光ケーブルである。

それでは、社会全体としてみて、自己愛人格傾向の人が増加しているかどうかといえば、
やはり、現代情報化社会、消費社会、核家族化、少子化などのいろいろな要因で
自己愛パーソナリティは増加傾向なのだと思う。
その方が生きやすいから、子どもの頃からその方向に向かうのだろう。
大人は驚くけれど、環境に対しての適応という面がある。

ネットショップで最安値でゲームマシンを手に入れて
最新の攻略法を頭に入れて
ゲームにふける子ども。
さらにチャットルームでゲームについて語る。

一方で、たとえば昔ながらのコマ回しや鬼ごっこをする「よい子」。
手作りのコマだったりすると朝日新聞に出てほめられてしまいそうだ。

また一方で、昔ながらの「悪いこと」をする子ども。

いろいろいてどうなるものか。

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韓国で最近起きているインターネット規制の議論は
無自覚型自己愛パーソナリティの人がひどい書き込みをして
過剰警戒型自己愛パーソナリティの人が自殺したことを
重く見たとも考えられる。

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1. 自己愛性人格障害のサブタイプ

無自覚型 oblivious narcissism
他者の反応に無頓着
高慢で攻撃的
注目の中心であろうとする
送り手よりも受け手
他者に傷つけられる感情をもつことを受け付けない

過剰警戒型 hypervigilant narcissism
他者の反応にひどく敏感
抑制, 恥ずかしがり, 目立つのを避ける
注目の中心になることを避ける
他者の話に軽蔑や批判の証拠を注意深く探す
容易に傷つけられる感情を持つ:恥と屈辱の感情を起こしやすい

悪性の自己愛型 malignant narcissism
他者に無関心
攻撃的・衝動的: 自分や他者に攻撃性を表現するときに自己の誇大性を確認する
他者との情緒的な交流がない
自己評価の満足に歪みがある(現実世界ではなされない)
病的誇大性が傷つけられたときに外傷的感覚を抱き, 怒りや抑うつの発作が起こる
(Gabbard ,1989を改変)

2. Gabbard による自己愛性人格障害の分類
無関心型(oblivious type)   
1 他人の反応に気づかない   
2 傲慢や攻撃的     
3 自分に夢中である      
4 注目の的である必要がある   
5 送信者であるが受信者でない   
6 見かけ上は, 他の人びとによって傷つけられたと感じることに鈍感である      

過敏型(hypervigilant type)
1 他の人びとの反応に過敏である
2 抑制的, 内気, 表立とうとしない
3 自分より他の人に注意を向ける
4 注目の的になることを避ける
5 屈辱や批判の証拠がないかどうか他人の言動に注意する
6 容易に傷つけられたという感情をもつ(羞恥や屈辱を感じやすい)
(Gabbard G O : Two subtypes of narcissist personality disorder)

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