映画「アメリ」に関してSAD(社会不安障害)の診断の手がかりLSAS-J 2008-04-13

映画「アメリ」に関してSAD(社会不安障害)の診断の手がかりLSAS-J

2005-11月7日
映画「アメリ
アメリは少しだけSAD(社会不安障害)だと思います。人と接する時にとても緊張します。それでもなんとかできる範囲でたくましく世界を生きています。
速いスピードで展開されるエピソードの中で描かれているのは、いずれもちょっと過剰な人達です。たとえば「公衆トイレが苦手」というのは、社会不安障害の症状リストの一つとして有名です。強迫性障害に近い人達もたくさん描かれます。無駄なことと知りながら、やはりどうしてもやらないではいられない人達です。
アメリは、20年間孤独を守り続けている絵描きに励まされ、人を励ます立場を選び取り、そのことをきっかけにして世界と関わるようになります。その人なりの世界との関わり方があるとさわやかに描いています。そして周囲の人達もどんどん変わっていきます。人は変わることができるのです。変わることができるし、変えることさえできるのです。
対人緊張が強いアメリは、直接ある人にあるものを渡すことができず、矢印をつけたり、彫刻で指さしたりして、回りくどく伝達します。緊張が強くても、工夫をして、生きることを楽しくさえできるのだと思うとすばらしいと思います。
明るく元気にハッピーエンドで、大変よい映画でした。うつの時にはまず見てみましょう。


フランス風色彩の豊かさはとても印象的です。壁の色、洋服の色。私の周囲の日本の景色はなんだか少し色彩が足りないなとさえ思いました。
ある人の日本文化評によれば、日本の主流の文化は「こぢんまりとして」単色であるとのことです。確かにそうかなと思います。上海の町並みのビデオを見たのですが、料理、人の風俗、彫刻、どれも「日本はこぢんまりとしている」と感じさせるものでした。伝統日本文化は安心感があって、私は好きですが、世界全般を見れば、色々あるのだと思います。

11月8日
映画「アメリ」に関してSAD(社会不安障害)の診断の手がかりLSAS-J
映画「アメリ」に関して、主人公の少女アメリはSAD(社会不安障害)にすこし近いのではないかとの印象を持つのですが、その診断の手がかりとしてはLSAS-J(日本版LSAS)があります。DSMによれば、「自分でも恐れる理由がないことは分かっているがやはり怖い」などと、もう少し立体的にとらえる必要があるのですが、一応のリストとしては役に立ちますので、紹介します。それぞれの項目の時に不安を強く感じるかどうかをチェックして、合計するものです。()内は個人的なコメントです。決定版というわけでもないですし、第一アメリカ文化を標準にしていますから、そのまま日本でも、というわけでもないと思います。表面に出た症状としてはこのようなことがあるとアメリカでいわれている、という程度のものとして参考にすればよいでしょう。

1.人前で電話をかける。(逆に電話のほうが落ち着くという人もいます。電話では吃音が出ないという人もいます。)
2.少人数のグループ活動に参加する。
3.公共の場所で食事をする。(食事は怖いもののようです。この症状は多いと思います。外食恐怖または会食恐怖などと言います。)
4.人と一緒に公共の場でお酒(飲み物)を飲む。(なぜか食事と飲み物を分けていますね。)
5.権威ある人と話をする。
6.観衆の前で何か行為をしたり話をする。(結婚式の祝辞を頼まれているが、何日も前から心配しているという相談は多いものです。)
7.パーティーに行く。(日本ではリッチな人以外はあまりないですね。たとえばPTAの集まりくらいでしょうか。)
8.人に見られながら字を書く。(結婚式やお葬式の記帳などですね、これが多い。書痙などと呼びます。)
9.人に姿を見られながら仕事・勉強する。(図書館など。最近は喫茶店で勉強する人も多い。)
10.余りよく知らない人に電話をする。(いっそのこと全然知らない人ならば平気ということもある。そのあたりも詳細に聞く。)
11.余りよく知らない人達と話し合う。(政治の話とかビジネスの話とか、まじめな話。)
12.まったく初対面の人と会う。(たとえば仕事で初対面なら平気だけれど、プライベートではダメという場合も多い。そのあたりも詳細化する。)
13.公衆トイレで用を足す。(特に男性の並んで用を足す場所。洋式便座は嫌いという人も多い。)
14.他の人達が並んで着席している場所に入っていく。
15.人々の注目を浴びる。(14も16も一段抽象化すると15になります。このあたりの杜撰さがアメリカ的です。)
16.会議で意見をいう。(不意に指名されると平気なことも多い。前々から予定されているとあがる。)
17.試験を受ける。
18.余りよく知らない人に不賛成であるという。(アメリカ式ですから仕方ないですね。)
19.余りよく知らない人と目を合わせる。(これも日本では普通失礼なことですね。)
20.仲間の前で報告をする。(どんな仲間かによりますね。それにしても、もう少し項目を整理出来るだろう。項目間で抽象化のレベルが明らかに異なる。)
21.誰かを誘おうとする。(「誰か」によると思いますが。)
22.店に品物を返品する。(「店」によるのではないですか。)
23.パーティーを主催する。(どんなパーティなんでしょうね。)
24.強引なセールスマンの誘いに抵抗する。(強引の程度によりますよね。)

映画アメリのお父さんはOCD(強迫性障害)ですね。いろいろ症状を抱えつつもうまく生きています。それでいいなと思います。症状をなくすことだけが治療ではありません。生きる知恵があればいいのです。
アメリには知恵があります。症状を抱えつつ、人のためになることをしようと決心して、知恵を絞ります。人間的な知恵とは、そのようなものではないでしょうか。知能テストで立方体を数えるだけではないはずです。

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