MAD理論推敲の経過 2008-12-28
MAD理論の中心部分についてはずっと昔に思いついていて、
そのつもりで読むと、森山論文などは類似の部分をだいぶ含むようだと感じていた。
精力性、強迫性、弱力性と規定して、それらの混合の仕方でいろいろな病前性格を
記述できることは分かった。
この他の性格要素としていろいろ挙げられるが、同調性、対他配慮などが問題として残った。
状況因とかの話になるとうまく結びつかなかった。
その後のSSRIなどのセロトニン説についても結びつきが難しかった。
笠原先生の病前性格の解説は何度も読んでいたけれどもやはりいろいろなことがいわれているのだという印象しかなく、
各病前性格について少しずつ現代的な修正があったりなど、ますます難しくなっている。
そのあたりは
笠原嘉:うつ病の病前性格について.笠原嘉編「躁うつ病の精神病理1」弘文堂,東京,1976 ; 1―29,
でもすでに言及されていて、
いったい何がどういう関係にあるのかとてもわかりにくかった。
しかしながら実際の患者さんについて考察してみると、
それぞれの類型によく当てはまる例も経験するもので、
やはり病前性格類型は有効なものだとも感じていた。
ある日、原田誠一先生の小さな規模の講演会があって、
うつ病の認知療法の話を聞いていると、
原田先生がまとめるには、
笠原先生の説では、うつ病の病前性格の一部は、まとめていえば、
熱中性、几帳面、持続する陰性気分、対他配慮の四点だという。
なんとこの順番で私の考えているMAD+対他配慮となっているわけで、
前者三つと対他配慮は明らかに別物だとひらめいた。
前者は生物学的な要素で、他者配慮は社会的な要素なのだ。
そのようにして整理してみると、各病前性格の位置づけがはっきりするし、
それからどのようなうつ病が発生するのか理解できた。
そしてその上に、現在進行中の、自己愛の肥大化と未熟性のままとどまる傾向を加味すれば、
現代に見られるうつ病の諸類型も分類整理できることが分かった。他者配慮の変質も説明できた。
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それでは現在いわれているセロトニン説はどうなるのだろうか。
おそらくセロトニン系のレセプターについてダウンレギュレーションが進行するため
神経細胞の過敏性が抑えられる。
そのことでMA細胞の反応亢進と休止が回避されることになるのだろう。
それはつまり、予防効果があるというに近い様相である。
憂うつ、いらいら、不安が収まるのに一ヶ月、さらに三ヶ月目くらいで興味が戻り、意欲が回復するという説明は、M細胞の回復の進行程度を表していると考えられる。
SSRIの効果はレセプターの過敏性が訂正されることで説明されるだろう。
興味が回復するとは、
ジャクソニスムでいうと興味を抑圧していた成分が弱くなるという解釈になる。
それで本来の興味が発現することになる。
この時間的プロフィールをMAD理論は説明できるかということになる。
これは細胞修復は深部から浅部に向かって時間的に進行するわけで、
そこが関係しているだろう。
破壊が起こるときは多くは浅部から始まって深部に破壊が及ぶ。
従って症状の進行に順序があり、回復は逆の順序になる。
これは大脳皮質の破壊と修復に関する脳内出血後のリハビリテーションの原則となる。
つまり、うつ病では壊れる順序があり、回復する順序がある。
回復する順序に従ってリハビリすべきであるという原則になる。
これがジャクソニスムである。