シャワートイレ症候群 2017-6-21
1.関連痛としての陰部の痒み
陰嚢掻痒症(いんのうそうようしょう)。別名、陰部掻痒症・陰門掻痒症です。女性の場合もあります。何しろ男女の区別なく、ハッキリした皮膚に所見もなく、外性器・肛門が痒くなる病気です。皮膚の所見は掻きこわしの所見だけです。
皮膚科は視診がとても重要です。皮膚にできた皮疹・湿疹・丘疹・発疹などを観察して、病気を診断するのです。なのに、皮膚が全く正常で、それでいて異常にかゆいのです。これでは皮膚科医も困るでしょう。原因が分からないので、取り合えず対症療法として痒み止めの軟膏や抗ヒスタミン剤を処方しますが難治性で再発を繰返すようです。
皮膚科の先生は、恐らく前立腺肥大症のような排尿障害は尿の切れが悪く、陰嚢に尿が付着してかゆくなるのだろう思っているのではないでしょうか。
しかしこれは誤解でしょう。なぜなら、陰嚢が尿でかぶれて痒みが生じるのであれば、赤ちゃんのオムツかぶれのように陰嚢皮膚が赤くただれていなければなりません。ところが陰嚢掻痒症の場合、ほとんど方が原因不明とされるように陰嚢皮膚は正常です。
では、なぜ痒くなるのでしょう。その原因を考えるのに関連痛という生理学的生体反応を知ると容易に理解できます。
生理学では、痒み=微細な痛み感覚として考えます。ですから陰嚢のかゆみ=陰嚢の痛みとして理解できます。もう少し正確に表現すれば、陰嚢の皮膚のかゆみ=陰嚢の皮膚の微細な痛みということになります。すでに説明したように、関連痛は現在痛みのある場所・部分とは異なる、離れた他の臓器・器官の刺激が、投影されて感じる痛みのことを指しています。しかし、そこには一定の法則があります。関連痛を感じている皮膚と同じ脊髄中枢の位置でコントロールされている臓器・器官の病的刺激の投影であるということです。
陰嚢の皮膚を支配している脊髄中枢は仙骨部脊髄2番~4番です。仙骨部脊髄2番~4番中枢で支配されている臓器は、膀胱・前立腺・尿道・直腸・子宮頚部(女性のみ)です。ですから、膀胱・前立腺・尿道・直腸の病的刺激で陰嚢は関連痛が生じることになります。
陰嚢のかゆみ(関連痛)を訴える患者さんに遭遇(診察)した場合、これらの臓器・器官の病気を選択肢として考えなければならないことになります。
排尿障害を改善させれば、この痒みもおさまると考え、排尿障害の治療薬であるハルナールDを処方しました。
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2.シャワートイレ症候群
洗い過ぎじゃありませんか。よく聞いてみてください。
水流の圧と塩素か何かで皮膚がやられるんです。
そうすると、初めにかゆみがあってひっかく、小さなキズが出来る、排便か何かですこし汚れる、するといつも汗をかいたようになる、とくに布団にはいると温かくなってかゆく なり、掻くと今度はいたかゆくなるんです。
視診上はなれないとよく分かりません、かゆいはずなのに綺麗すぎるとき、皮膚が軽く白濁しているときが多いです。ただ真菌症とは鑑別してくださいね。
治療法はあまり洗いすぎるなと指導し、亜鉛華軟膏を30g程処方して一日数回塗布させます。シャワートイレは5秒まで、柔らかい紙で水を拭き取るでなく、吸わせるように指 導します。絶対に右から左へ(前から後ろ?)こすりあげるなといいます。
ご本人いたって真面目な方もおおく、ちゃんと洗っているのにおかしい、かゆいのに痛い、これを知らない医者を堂々巡りとなり、どんどん神経的に参ってしまう。
とある会社から、ウオッシュ*ット症候群とは呼ばないでとありました。登録されているようです。