「脳のペースメーカー」インプラントで鬱病治療 2008-6-11

「脳のペースメーカー」インプラントで鬱病治療 2008-6-11

迷走神経刺激(VNS)装置を鎖骨の近くに埋め込んで、左側の迷走神経に接続する。右側は心臓に直結しているので、必ず左側の迷走神経に接続する。

サンディエゴ発――精神科医によれば、迷走神経を通して脳に電気パルスを送り込む新しい医療技術は、重症の鬱病の抑制に、少なくとも薬物治療と同じくらいの効果があるという。

この『迷走神経刺激(VNS)』セラピーでは、直径約5センチメートル、厚さ約1センチメートルの円板状の装置を左の鎖骨近くの皮下に埋め込み、頸部の迷走神経に接続する。電池で駆動する円板は、規則的な電気的パルスを迷走神経に送る。電気パルスは迷走神経を通って、鬱病治療で重要な脳の数ヵ所に達する、とマサチューセッツ総合病院のDarin Dougherty博士は説明する。

「ミリグラム単位で薬を処方する代わりに、ミリアンペア単位の電流を流すわけだ」とDougherty博士は言う。埋め込んだ円板は、皮膚の上から器具を当ててプログラムを書き込んだり、書き換えたりできる。パルスの強度や頻度など、装置の設定に関する各患者のデータは、ハンドヘルド・コンピューターでメモリカードに保存する。

VNSは10年前からてんかんの治療に用いられている。てんかん治療では、発作の回数が約40%減少する例もある。てんかん治療で効果が現れていなくても患者が装置を使い続けようとするのを見て、医師たちは、重い鬱病の治療に使えるのではないかと思うようになった。

「効果が見られない(てんかん)患者に、装置を外していいか尋ねたら、ほとんどの患者は『いいえ、外さないでください』と懇願した。発作をうまく抑制できなかったケースでも、患者の精神状態は安定していた」と米国立衛生研究所(NIH)のMitchel Kling博士は言う。

VNSセラピーは2005年7月に鬱病の治療法として米食品医薬品局(FDA)に認可された。装置を製造しているCyberonics社(本社ヒューストン)によれば、FDAに認可されて以来、約3000人の鬱病患者がこの装置を利用してきたという。サンディエゴで開催中の米精神医学会(APA)の会議に集まった医師たちの話では、かなりの成果を上げているらしい。

2005年10月に行なわれた研究では、重症の鬱病患者の約3分の1に効果が見られ、半分近くの患者が寛解した。91%の患者はその後の9ヵ月間、よい状態を保っている。すぐには効果が現れなかったという報告のあった患者の中にも、後に症状が改善し、寛解した例がある。

研究結果から、VNSセラピーはノルエピネフリンやセロトニンに関わる中枢を刺激し、血流量を増やしてニューロンの活動を活性化することが分かっている。薬物療法も同じような目的で行なわれるが、成功率はそれほど高くない。研究チームは、VNSがなぜ効果を上げるのか完全には分からないと率直に述べている。

術後の患者は、電気パルスの発生するサイクルで――通常は30秒ごとに5秒間――声がかすれると報告している。Dougherty博士によれば、たとえば人前で話すといった場合、装置の電源を切ることができる。患者が自分で磁石を装置の上に持っていくと、動作を一時停止させられるという。

Dougherty博士によると電池の寿命は8〜12年だという。欠点としては、全身のMRIや超音波を使う理学療法は、配線が熱くなって神経に損傷を与えるおそれがあるため、避けなければならないことが上げられる(ただし、診断用の超音波なら問題はない)。

従来の鬱病治療では、副作用が出たり、患者がもう良くなったと自分で思ったりして、治療が中断してしまう傾向があることが知られている。VNSセラピーなら、こうした鬱病治療の最大の問題をうまく回避できる。

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VNSセラピーはノルエピネフリンやセロトニンに関わる中枢を刺激する。
しかしVNSがなぜ効果を上げるのか完全には分からないと率直に述べている。

迷走神経を刺激という大雑把なところがいいですね。

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