書き出すことが癌(がん)患者を癒す 日記療法 2008-1-21
書き出すことが癌(がん)患者を癒す
癌(がん)の診断を受けた人の多くは、サポート団体、心理療法、抗うつ薬などに頼って疾患のもたらす恐怖や困難と闘っているが、紙とペンを用いて心の奥深く存在する思考や感情を書き出すことが、精神と身体の両面に多大な向上をもたらすという。この方法は「筆記表出」または「日記療法」と呼ばれ、徐々に広まりつつある治療法である。
米ダナ・ファーバーDana Farber癌研究所(ボストン)のSusan Bauer-Wu氏によると、初めはこの治療に乗り気でなかった人も、やってみてその効果に驚くことが多いという。日記療法では、患者の望むことや恐れていることを思いつくまま何でも自由に書き出すように促す。主に悩みやストレスを中心に、句読点や単語などを気にせずに書き、すでに書いたことにも自由に書き足すよう勧める。その結果、一種のカタルシス(浄化)が生じ、内面に抑え込まれていた問題が表出して気持ちを整理することができるという。
米エモリー大学(アトランタ)のRobin Fivush氏は、この治療では単に感情を表出するだけではなく、それを反すうするのだと説明している。この治療で最も効果のあった人では、「気付いた」「理解した」「今わかった」というような「認知過程」の言葉が多く使用されているという。このような自己洞察が、癌その他の疾患の対処に有用であることが、数々の研究により示されている。
Bauer-Wu氏は、乳癌や他の癌の患者について日記療法の効果を追跡する3研究を実施した。従来のプログラムでは1日30分の筆記作業を4日行うが、癌患者ではもっと多くの時間が必要だとして、1カ月後、さらにその1カ月後に30分4日間の筆記作業を繰り返した。筆記には紙とペンまたはコンピューターを利用。意外にもコンピューターに熟達した若者でも約半数は手書きを選んだ。3研究に共通する結果の1つとして、患者の医療利用率が減少し、身体症状も軽減し対処も上手くできるようになった。
この治療は、思春期前の小児にはあまり効果がなく、孤独好きで引っ込み思案な患者に最も効果的で、話し好きでない人にはサポート団体よりも適しているという。Fivush氏によると、この治療は特に読み手を想定しておらず、重要なのは書くという行為そのもので、費用がかからないことも利点だという。
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「筆記表出」または「日記療法」
手書き
重要なのは書くという行為そのもの
なるほど、そうか。