急性中毒患者に活性炭を投与しても死亡率を低減する効果は見られない 2008-3-11

急性中毒患者に活性炭を投与しても死亡率を低減する効果は見られない 2008-3-11

中毒物質を経口摂取した急性中毒患者に対する処置として、消化管除染(催吐、胃洗浄、活性炭の服用など)が行われるが、その効果については議論がある。今回、農薬や有毒植物を意図的に摂取した患者に対する活性炭の複数回投与の効果をスリランカで調べた結果、活性炭を投与しても死亡率を低減する効果は見られないことが示された。英国Oxford大学のMichael Eddleston氏らの報告で、詳細はLancet誌2008年2月16日号に掲載された。

 先進国では、服毒して病院に運ばれた患者が死亡することはまれで、消化管除染の利益はさほど大きくないと考えられている。しかし途上国では事情は全く異なり、服毒自殺を試みた人の死亡率は高く、先進国の10~50倍といわれている。毒性の高い農薬や植物が使用されることが、死亡リスクを高めている。

 例えばスリランカで主に服毒自殺に用いられるのは、有機リン酸系農薬またはキバナキョウチクトウの種子だ。これらはいずれも活性炭に結合するが、これまで単回投与、複数回投与のいずれも臨床的に有効であることを示すエビデンスがなかった。そこで著者らは、同国で、活性炭の単回投与または複数回投与が、服毒患者の死亡を減らせるかどうか調べるオープンラベルの並行群間無作為化試験を実施した。

 対象は、スリランカの3病院で、毒物を摂取して入院した15歳以上の患者4632人。うち2338人(51%)が農薬を、1647人(36%)がキバナキョウチクトウの種子を摂取していた。年齢の中央値は25歳。

 結果から、少なくとも、有機リン酸系農薬またはキバナキョウチクトウの種子が自殺に用いられ、服毒から入院までに4時間程度を要するようなアジア太平洋地域では、活性炭の投与は有効ではないことが明らかになった。より早期に活性炭を投与すれば利益が得られる可能性はあり、研究の余地がある。幅広い患者に有効な治療方法を探すことが大切だろう。

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